6月の読書
平川克美 著 『俺に似たひと』(医学書院・2012)
父親の介護・看護・見送り、実家の片付け等々の「物語」
食事と排泄がとっても大事、という具体的な話を織り交ぜながら、
端的な記述からも伝わる息子としての動揺、実動の日々の重さが、
美化にも悲痛にも偏ることなく
(それでも事実・実感の言葉は十分に胸を突くのですが
客観視する冷静さを心掛けた、サラリとした文体で綴られています
ご両親が生きてこられた戦前戦後、
1950年生まれの著者の学生時代、
2011年3.11を挟んだ近年、
それぞれの描写に時代の空気を感じながら
受け継がれるものと
消えゆくものがあるとして
伝え残されることの尊さ
受け止めることの大切さ
生きること
死ぬこと
それらが一体であること
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父を見送ったときのこと
母の献身
私にできたこと
(物理的な意味でなく)できなかったこと
祖父母たちのこと
いろいろに思いを巡らせました
著書の観察や介護の日々には敬服するほかない心情でしたが
その筆致は、
誰にも過ぎてからしかわからないことがあると
流れゆくせせらぎのような、やさしい読後感でした
「あとがき」には、
個人的な体験であるものの介護は普遍的な問題でもある
という意識に基づいて書かれたものであることが記されています
いざわ直子さんの表紙絵や挿絵もとてもよかったです
本書が連載されていたという医学書院のウェブマガジン「かんかん」
http://igs-kankan.com/
こちらも興味深い情報が満載
偶然手にした1冊からはじまる数珠つなぎ
『俺に似たひと』の刊行前の予告記事はこちら↓
http://igs-kankan.com/article/2011/07/000442/