2020年6月22日月曜日

⑦『あおいトラ』と『オワリノナイフーケイ』

【ブックカバーチャレンジ7日目】

ようやく全7回の最終回です






『あおいトラ』

長沢 明 作(福音館書店・2019年12月1日発行)
月刊予約絵本「こどものとも」通巻765号


先ごろ新潟市美術館で開催された展覧会「オワリノナイフーケイ」の作家・長沢 明さん
による絵本です
美術館内では伸びやかな原画や構想途中のゲラなども拝見できたのがとてもよかったです



「あおいのが きました」で始まるものがたり

かわいらしいおはなしかと思いきや、、、
何度読んでも泣きそうです


あおいの が出会った「シマウマ」や「フラミンゴ」みたいなひとに出会うことがあります

あおいの みたいに弾んだ途端にぼちゃんと落ちたことも、あったかもしれません

でもそれ以上に、あおいの の声を聞いてくれた「なまず」みたいなひとにたくさん出会って、
そのおかげで私は今の私になっているのだと思います


あおいのと一緒に歓喜の叫び鳴き


世のこどもたち
泣いたり、叫んだりしながら、たくさんのひとと出会って
のびやかに、それぞれの道をね


幼少期にたくさん親しんだ「こどものとも」には大好きなおはなしがたくさんありました
大人になってからみんな手放してしまったこと、今、残念に思っています




展覧会は本当に素晴らしくて図録も求めましたので
こちらを「ブックカバーチャレンジ」のラストにしたいと思います



長沢明 展『オワリノナイフーケイ』

表紙のこがね色みたいな黄色もすき
( 作品「マンヨウノハナシ」)



撮影可能だった会場ではデジカメでもたくさん撮らせてもらいましたが、
キャプションに書かれた長沢さんの言葉も印象的で、
作品画像と併せて手元で味わい直しています

トラやクジラ、巨大な「どうぶつ」といった野生のいきものの姿を通して表現されたもの、
体の感覚に呼びかけるボリュームで示された膨大な時間の蓄積、
生きること、いのちめぐること、
展示空間で感じたことをありありと思い返します


図録に収録された学芸員さんたちの解説の(当然ながらの)学術的なることに感心しながら、
自分はやはり研究者ではなく「一鑑賞者」であると思い知るのですが、
それでいい、と思えます


あおいトラだもん、 ん? トリだもん


自由に、自分のために、好きなものを、惚れ惚れと、観させていただけるしあわせ

惚れ惚れとした実感を、これからもお伝えしていきたいと思います





先に紹介した『福田利之作品集2』と「オワリノナイフーケイ」展で、
私の世界はすでに「どうぶつ」たちがみっちみち

maison de たびのそら屋での「どうぶつアート」展は
いよいよ24日(水)開幕です

どうぞお出かけください


2020年6月19日金曜日

⑥『福田利之作品集2』

【ブックカバーチャレンジ6日目】

6/21 追記と画像差替え





『 福田利之作品集2 』
(玄光社・2020年5月1日初版発行)

イラストレーター・福田利之さんのHPはこちら⇒


素晴らしい装丁も含め、
好き、が詰まった一冊です


いろいろなことがある日々の中、
少し気持ちが絡まって、どうしたものかと思うとき

手に取れば瞬時に頬ゆるみ、
気まぐれにページをめくれば、こころのざわめきは遠のいて

しばし、ことばの無い世界に浸ります


そのうち今度は福田さんの世界のせつなさと、やさしさにちょっと泣きそうになって


それから、いろんなことが腑に落ちたような気持ちで
自分の世界に帰ってくるのです




5月の二人展の搬入時、季村江里香さんと猪爪彦一さんと、
ひとしきり「本」についての話題になりました

江里香さんは、自身の体調のことや新型コロナのことで現実があまりに大変なので、
このところはこれまで好きだった本が読めなくなっているのだけれど、
好きな工芸家の本だけは読めたのです、と仰いました

この状況下で、敬愛する作家の世界が自分にとって大きな意味を持ったように、
アートに何ができるか、何もできないのではないか、と思いかけた時もあったけれど、
今はそうではないと思っていると、話してくださったのは、とても心に残ることでした


自分にとって大切なものを
自分の世界ではない場所で思い出す
ということが
ありますね




特典のひとつ、特製ステッカーは、、、アマビエならぬ
アマエビ?

そういうところが好き


傍らの文字はドイツ語で「ふつうの生活」と描かれているとか

そういうところも好き





この作品集は「ほぼ日」こと「ほぼ日刊イトイ新聞」のオンラインストアで、4月の末に予約注文をして待つことほぼひと月でした

今回は特製ステッカーに加えて、直筆サインとイラストが描き添えられるという、この上なくスペシャルなオンライン販売↓
https://www.1101.com/fukudasakuhinsyu2/index.html


↑では福田さんの制作の様子の動画(手紙社さん撮影・編集)も見ることができます
そこで仕上げられた作品も作品集に収録されていますが、印刷されたものからはわからない原画の質感や工程を知ることができてとてもうれしい動画でした

ネットの情報も、手元の本も、どれもが福田さんにつながっているのだけれど、やっぱりいつの日か、福田さんの原画が観たいし、ご本人にも逢えたら、うれしいなぁ。。。




直筆サインとイラストは、なんと1500冊(!)に、全て異なるデザイン(!)で入れてくださったとのこと
サイン&イラスト入れの様子は中継されたのですが、ステイホームのGW、私も画面釘づけで視聴していました

↑でその動画も観れますが、そんなに描いてくださるの!? 全部違う絵ですよ?!と驚嘆しながら、さすがに後半はボリュームが減るのかな?などと思いつつ、どんなサインが届いてもうれしい、と思って楽しみに待ちました


「届いたサインをアップしてください」という福田さんのリクエストで、ツイッターでは #福田のサインで、たくさんの画像が寄せられています
全部は見てないですが、よくまあこんなに違うイラストで描いて下さいました!


私はツイッターをやってないので、、、ここでご披露いたしましょうか

この「ブックカバーチャレンジ」が無ければ、ひそかな宝物として、お披露目しなかったと思いますが、福田画伯の貴重な作品ですものね


どうぶつなら、猫かな、鹿かな、熊かな・・・
どうぶつ以外もあり得るのね・・・と思いを巡らせていましたところ、なんと





トリが 来ました ☆☆☆


一筆描きのようなフレームのあるデザインです

こんなふうにいろんないきものたちが溶け合うような
福田さんの世界が大好きです

太陽とたなびく雲と降り注ぐ雨が、樹々たちを通して
巡っていることを感じます


この世界はつながっているけれど閉塞していない

トリは世界を自由に行き交うもののように見えます


オンリーワンの、スペシャルサイン


福田利之さん、ほぼ日のみなさま
どうもありがとうございました



そして、こちらも ( *´艸`) 
福田さんデザインの日付印





福田さんを福田さんと知らなかった頃に出会ったポストカード
ひとめぼれして、お友達に出す分と手元に残す分と買いました




こちらは比較的、近年出会ったもの
孤独なのもいいけれど「密!」なのもすき


もしも雑貨なども置くお店だったなら、
福田さんのカードのお取り扱い店にもなってみたかったけれど


今はどの作家さんにおいても
原画やその源に
近づいていきたいです



2020年6月7日日曜日

⑤『ぼくらの 民主主義なんだぜ』

【ブックカバーチャレンジ5日目】





『ぼくらの 民主主義なんだぜ』

高橋源一郎 著(朝日新書・2015年5月30日第一刷発行)


2012年末~2017年初頭、暮らしの場が変わって家事専業で過ごさせてもらった数年間は、
学生時代以上に読むこと・知ることが楽しくて、学ぶことに貪欲になっていた時期でした


2011年に東日本大震災と福島第一原発事故があって、
2012年末に民主党政権から第二次安倍内閣・自公連立政権になって、
2013年夏の参院選でも与党が圧勝、
その際にメディアがこぞって「ねじれ解消」を謳ったあたりから、
私にはますます政治がわからなくなって、


世界は不穏で、混濁しているように感じられ、

理解するための手がかりを求めて、ファンタジーではなく、
取材や研究に基づくフィクションを読まずにはいられなかった時期でした

(それは今も続いています





本書は、そんな2011年4月から2015年3月まで、
朝日新聞の月1回の連載「論壇時評」に加筆されたもの


私には難しく感じられる部分もありますが、
著者は「伝えたい」という熱い意思をもって、最大限の易しい言葉で語りかけてくれます


政治は暮らしに直結していること、政治は特別なことではなく、
暮らしを考えたら政治を考えないわけにはいかないことを再認識します


時事的なことは全て過ぎ去り、リアルタイムで下さなくてはならなかった判断は
すぐに検証の対象となり、正しかったこと、間違っていたこと、あると思うのですが


この時代になにがあったかを記録しておくこと、
作家の場合は自分の言葉で自分の解釈を世に公表しておくことが、
のちの世において重要であるという立ち位置は


公文書を改ざんしたり、破棄したり、
責任の所在を明らかにし、検証する上でも不可欠な議事録すらも作らない、
現政権のそれとは真逆のものだということは、わかります



今の世を理解するためだけでなく、
過去を検証するためだけでもなく、
未来を照らす灯のひとつとして持っている一冊


対話がある場所には希望があると、
感じられる著書です





今、小説やファンタジーはほとんど読みません
残念ながらその心境にならないのです

我ながら、ゆとりがない、と感じます


この度の「ブックカバーチャレンジ」で、
過去に親しんだ児童書や小説などを読み返すことが、とてもいい時間になっています



2020年6月1日月曜日

④『カンガルー日和』

【ブックカバーチャレンジ4日目】




『カンガルー日和』

村上春樹 著 / 佐々木マキ 絵
(平凡社・1983年9月9日初版)

読み物としての内容も、形あるモノとしても、好きな要素が揃った1冊


1. に入っていること(必須ではないけれど特別感)




2.グラシン紙 のような半透明の紙が掛けられていること
(これも必須というわけではないですが、ただグラシン紙が好き
(物語は深い霧の向こうにあるような…




3.好きなカラーリング 、グラシン紙的な紙の下の表紙のこの黄色 
(青も好きですが、パトロールカーみたいなこの黄色も好きな色



4.四角い 
(厳密には縦長の長方形ですが、四角いのは意味もなく好き



このように中身にたどり着く前に既にトキメキまくる本なのですが、
ページをめくれば・・・ 箱の表紙と同じく佐々木マキさんの絵‼




かくしてリアルとファンタジーの境目の溶け行くことが
示されるのです




5.作家と挿し絵画家、両方が好き
(時に絵から物語に入っているように思われるフシもあります



村上春樹さんのあとがきには
「長篇の表紙をずっと描いていただいていたのだが、本文の方で一緒に仕事をしたい
という念願がかなって、とても嬉しい」と書かれています



綴られた短編の中で何度も読み返すのは「図書館奇譚」
村上春樹ワールドでは「羊男」の出て来るお話が好きです

もちろん『羊男のクリスマス』(村上春樹×佐々木マキ・講談社文庫・1989)も持っています

シナモンドーナツを食べるときに羊男を思い出すのは、羊男ファンあるある


村上春樹さんのお話は、出て来る食べ物が本当に美味しそうです
閉じ込められた絶望の図書館の地下室においてさえ


新型コロナによって図書館が休館になっていた間に、
人知れず、脳味噌をちゅうちゅうされたひとはいなかったでしょうか。。。





佐々木マキさんの絵本『やっぱりおおかみ』
(福音館書店・1973初版)も、好きな1冊


「3密」とは無縁のおおかみ



*****


長らく読んでいない村上春樹さんの著書
話題になればなるほど遠ざかっていましたが、
新刊『 猫を棄てる  /  父親について語るとき 』は折をみて読みたいです